主文
1(第1事件)原告Aの請求を棄却する。
2(第2事件)
(1)原告Aは,被告Bに対し,金3800万円及びこれに対する平成10年4月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被告Cは,被告Bに対し,金300万円及びこれに対する平成10年4月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)被告Bの原告Aに対するその余の請求を棄却する。
(4)原告Dの原告A及び被告Cに対する請求をいずれも棄却する。
3(第3事件)
(1)原告Aは,被告Bに対し,金390万円及びこれに対する平成14年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)原告Aは,被告Bに対し,平成14年2月1日から,両名の離婚が成立するまで,毎月末日限り金24万円を支払え。
4訴訟費用は,第1事件については原告Aの負担とし,第2事件については,被告Bと原告A及び被告Cとの間に生じた費用は,原告A及び被告Cの負担とし,原告Dと原告A及び被告Cとの間に生じた費用は,原告Dの負担とし,第3事件については原告Aの負担とする。
5この判決は,第2項(1),(2),第3項(1),(2)に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1第1事件被告Bは,原告Aに対し,金3845万6913円及びこれに対する平成9年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2第2事件
(1)原告Aは,被告Bに対し,金3800万円及び内金2800万円に対する平成6年7月1日から,内金1000万円に対する平成10年4月19日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)主文第2項(2)と同旨
(3)原告Aは,原告Dに対し,金500万円及びこれに対する平成10年4月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)被告Cは,原告Dに対し,金200万円及びこれに対する平成10年4月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3第3事件
主文第3項(1),(2)と同旨
第2事案の概要
本件は,夫である原告Aが,妻である被告Bに対して,原告Aの特有財産の管理委任契約に基づく受取物引渡し及び遅延損害金の支払を請求をしたところ(第1事件),被告Bが,原告Aに対して,同原告の債務を立替払いしたとして,事務管理に基づき立替金返還請求及び遅延損害金の支払を請求し,また,被告B及びその子である原告Dが,原告A及び被告Cに対し,不貞行為等による不法行為に基づき損害賠償及び遅延損害金の支払を請求し(第2事件),さらに,被告Bが,原告Aに対し,婚姻費用分担契約に基づき,約定の金員のうち,未払分及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,かつ,将来の婚姻費用の給付を請求したもの(第3事件)であり,以上の3事件が併合された事案である。1争いのない事実等
(1)原告Aと被告Bは,昭和43年11月25日に婚姻した夫婦であるが,現在は別居している。
原告Dは,原告Aと被告Bとの間の長女(昭和45年5月7日生)である。
原告Aは,被告Bと婚姻後,再渡米してアメリカの写真専門学校を卒業して帰国し,昭和44年10月ころ,写真店「J」(以下「J」という。)を開業した。
原告Aの父は,昭和49年8月死亡し,原告Aは,被告Bの肩書住所地の土地175坪(以下「本件土地」という。)の借地権と同土地上の建物(以下「本件建物」という。)を相続した。
原告Aは,昭和49年ころ,カメラマン助手として被告Cを雇用し,昭和52年夏ころ,同被告と深い関係となった。
原告Aと被告Cの関係は,昭和55年ころ,被告Bの知るところとなった。
原告Aは,昭和56年6月,本件建物を改築し,本件土地の残地に駐車場施設(以下「本件駐車場」という。)を建築した。
原告Aは,平成6年3月,被告Cとともにオーストラリアへ出国し,平成7年4月,被告Cとともに帰国し,以降,被告Cと同居している(争いがない)。
(2)さくら銀行深川支店の「J駐車場A」名義の普通預金口座(以下「本件口座」という。)には,原告Aが所有する本件駐車場からの賃料収入が入金されていた。
本件口座からは,昭和56年6月から平成7年8月までの間に,少なくとも6328万6913円の金員が出金された。
その具体的な出金状況は,別紙記載のとおりである(争いがない)。
(3)被告Bは,平成6年3月から平成7年4月までの間に,原告A所有の動産類を第三者に対して以下の代金で売却した(争いがない)。
自動車(ライトエース)代金50万円
自動車(セドリック)代金100万円
ヨット代金340万円
カメラ等撮影機器類代金170万円
合計660万円
(4)原告Aは,被告Bに対し,平成9年12月8日の本件第1回口頭弁論期日において,原告Aの被告Bに対する委任契約に基づく受取物返還請求権,不法行為に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を自働債権とし,被告Bの原告Aに対する立替金返還請求権を受働債権として,これらを対当額において相殺するとの意思表示をした(顕著な事実)。
(5)原告Aは,被告Bに対し,平成7年9月12日,婚姻費用として,月額24万円を毎月末日限り支払う旨書面で約し,以後,平成10年1月までは約定どおり婚姻費用を支払っていたが,平成10年2月から平成11年3月までは月額18万円しか支払わず,平成11年4月から平成14年1月までは月額15万円しか支払っていない。
平成10年2月以降平成14年1月までの原告Aの未払金額は,合計390万円である(争いがない)。
2争点
(1)第1事件
ア原告A・被告B間の委任契約の成否
イ被告Bから原告Aに対する受取物の交付の有無
ウ本件口座に入金された預金の費消による不法行為の成否
エ自動車等売却による不法行為の成否
オ自動車等売却による不当利得の成否
(2)第2事件
ア被告Bの立替払いの事実の有無
イ原告Aと被告Cの被告Bに対する不法行為の成否及び損害
ウ原告Aと被告Cの原告Dに対する不法行為の成否及び損害
(3)第3事件
ア職分管轄の有無
イ婚姻費用分担額
3争点に関する当事者の主張
(1)第1事件
ア争点ア(原告A・被告B間の委任契約の成否)について
(原告Aの主張)
原告Aは,被告Bに対し,昭和56年ころ,本件口座の通帳の管理を委ね,本件駐車場を賃貸することによって得られる収入の管理及び借入金返済事務の一切を委任した。
なお,本件口座の通帳は,被告Bの寝室にあるサイドボードの引き出しに保管されていた。
(被告Bの主張)
被告Bは,原告Aから本件口座の通帳の管理を委ねられたことはない。
本件口座の通帳及びこれに使用していた印鑑は,原告Aが自らの書斎の机に保管し,管理していた。
駐車場収入の管理も原告Aが行っており,被告Bは原告Aの指示を受けて,駐車料金の入金のチェック,借入金の返済やその他の支払事務を行ったことはあるが,入出金処理の後には通帳と印鑑を原告Aに返還していた。
イ争点イ(被告Bから原告Aに対する受取物の交付の有無)について(被告Bの主張)
被告Bは,本件駐車場から得られた収入につき,原告Aのために必要な以下の用途に支出していた。
(ア)原告Aが経営するJのための支出
(イ)原告Aの借入金の返済
(ウ)駐車場の税金,管理費の支払
(エ)家族旅行や原告Dの海外旅行のための支出
(オ)自宅の改装費や車の購入費
(カ)不足した生活費
(キ)原告A自身の小遣い
(ク)家族の保険料の支払
そして,原告Aも入出金の動きについては了解していた。
したがって,仮に原告A及び被告B間で委任契約が成立していたとしても,被告Bは原告Aに対して受取物たる賃料収入を引渡し済みである。
また,原告Aは,平成6年に被告Cとともにオーストラリアに出国した後,被告Bに対して,自分はオーストラリアに永住するので帰国するつもりはない,だから自分の財産はすべて被告Bに与える旨述べている。
したがって,原告Aは,上記発言以前に被告Bが本件口座から支出した金銭については,その返還請求権を放棄したものであり,それ以後に被告Bが本件口座から支出した金銭については,被告Bに贈与したものである。
(原告Aの主張)
原告Aは,本件口座における入出金の動きを確認したことはなく,賃料収入について被告Bから引渡しを受けた事実もない。
ただし,被告Bが受け取った金銭のうち,以下の不当送金・引出額を除く分については,正当な支出であることを認める。
(ア)自動送金(駐車場等借入金)分421万5809円
(イ)自動送金(その他)分377万3219円
(ウ)生命保険料分312万9000円
(エ)現金2723万2340円
(オ)当店券分847万5720円
(カ)その他(定期)5万0000円
合計4687万6088円
ウ争点ウ(本件口座に入金された預金の費消による不法行為の成否)について
(原告Aの主張)
被告Bは,本件口座に入金された金銭のうち,以下の費目の金員を横領した。被告Bの領得行為の詳細は,別紙記載のとおりである。
(ア)自動送金(駐車場等借入金)分421万5809円
(イ)自動送金(その他)分377万3219円
(ウ)生命保険料分312万9000円
(エ)現金2723万2340円
(オ)当店券分847万5720円
(カ)その他(定期)5万0000円
合計4687万6088円
(被告Bの主張)
(ア)自動送金(駐車場等借入金)分については,原告Aの借入金の弁済のため,被告Bが第一勧業銀行深川支店の原告A名義の預金口座(後に東京相和銀行深川支店の原告A名義の預金口座に変更)に自動送金した金員の残額であるが,送金先の預金口座も原告Aが管理していたのであるから,横領ではない。
(イ)自動送金(その他)分については,本件駐車場の管理会社に対する毎月の管理費用3万円と,原告A及び被告Bが加入していた三越友の会の会費月額1万円を含む金員を支払うため,第一勧業銀行深川支店の原告A名義の預金口座に送金されていたものであり,被告Bが横領したものではない。
(ウ)生命保険料分については,いずれも原告Aの承諾を得て,被告Bが太陽生命との間で締結し,受取人を原告Aとしていた保険契約における保険料の支払のために出金されたものであり,被告Bが横領したものではない。
(エ)現金については,原告Aがオーストラリアに出国するまでは,Jの受取手形の割引のための支出,本件駐車場の利用者に対する敷金返還のための支出,家族旅行や原告Dの海外留学や海外旅行の費用,自宅の家具や家電製品の購入費用,自宅建物の修繕費用,本件駐車場の管理・修理費用,町内会費や交際費の支出に充てたものであり,被告Bが横領したものではない。
(オ)通帳上の「当店券」との記載は,口座を利用して小切手や手形の決済や割引をしたときに記入されるものであるが,原告Aが主張する当店券分は,Jの債務の支払のために振り出された手形や小切手の支払に充てられたものである。
また,仮に「当店券」との記載が,口座からいったん現金で出金せ
ず,そのまま外部に税金などを振り込んだ場合を広く意味するとしても,その支払は,Jの売掛代金の支払(手形や小切手の決済を含む。)や税金の支払に充てたものである。
したがって,この点でも被告Bは横領行為を行っていない。
(カ)その他(定期)は,原告A名義のさくら銀行深川支店の定期積立預金口座に送金したものであり,被告Bが横領したものではない。
(キ)また,原告Aは,平成6年に被告Cとともにオーストラリアに出国した後,被告Bに対して,自分はオーストラリアに永住するので帰国するつもりはない,だから自分の財産はすべて被告Bに与える旨述べており,被告Bが本件口座から出金し,それをいかなる使途に供しても,原告Aに対する不法行為となるものではない。
エ争点エ(自動車等売却による不法行為の成否)について
(原告Aの主張)
被告Bは,平成6年3月から平成7年4月までの間に,原告Aの所有する前記第2,1,(3)記載の動産類660万円相当を原告Aに無断で第三者に売却した。
(被告Bの主張)
原告Aは,被告Bに対し,オーストラリアに出国中,帰国の意思がないこと,原告A所有の財産をすべて被告Bに贈与すると述べたものであり,仮にそうでないとしても,原告A所有の動産類を処分して生活費等に充当する権限を被告Bに与える旨の意思表示をしたから,不法行為は成立しない。
オ争点オ(自動車等売却による不当利得の成否)について
(原告Aの主張)
被告Bは,原告A所有の動産類を処分することによって,法律上の原因なくして660万円を利得し,それによって原告Aが同額の損失を被ったのであるから,被告Bは原告Aに対して利得を返還すべきである。
(被告Bの主張)
被告Bは,原告Aの明示又は黙示の承諾を得て原告A所有の動産類を売却したのであるから,被告Bの利得には法律上の原因があるし,原告Aには損失がないから,不当利得は成立しない。
(2)第2事件
ア争点ア(被告Bの立替払いの事実の有無)について
(被告Bの主張)
原告Aは,昭和56年,第一勧業銀行から5000万円を借り入れ,後に東京相和銀行から借り換えた。
また,原告Aは,そのほかにも東京相和銀行や国民金融公庫から金銭を借りており,原告Aが失踪した後である平成6年4月の時点で,借入金の残金合計額は2883万5917円であった。
被告Bは,原告Aが失踪したため,Jからの収入が断たれ,全支出を本件駐車場からの収入でまかなうことを余儀なくされたことから,前記借入金を毎月弁済することは困難であると考えた。
そこで,被告Bは,実姉のEから平成6年4月17日に1400万円を借り,実兄のFから同月18日に600万円を借り,さらに被告Bの預金等800万円余を加えて,東京相和銀行に対し,同月18日に53万8000円を,同月19日に2673万3202円をそれぞれ立替払いし,国民金融公庫に対し,同年6月30日に81万1686円を立替払いした。
したがって,被告Bが原告Aの債務を立替払いした金員の合計額は,2808万2888円となり,原告Aは被告Bに対し少なくとも2800万円の立替金を返還する義務を負う。
(原告Aの主張)
原告Aが第一勧業銀行から5000万円を借り入れ,後に東京相和銀行から借り換えたこと,被告Bがこの債務の残額を東京相和銀行に立替払いしたことは認めるが,原告Aはその他の借入れはしていないし,被告Bがこれについて弁済したことも否認する。
イ争点イ(原告Aと被告Cの被告Bに対する不法行為の成否及び損害)について
(被告Bの主張)
(ア)原告Aは,昭和52年ころから,被告Cと不倫関係を持つようになり,その関係は昭和55年に被告Bの知るところとなったが,原告Aは被告Cとの交際を清算すると約束したので,被告Bは原告Aとの夫婦関係をやり直すこととした。
ところが,原告Aと被告Cは,昭和58年ころから再び被告Bに隠れて男女関係を持つようになり,平成6年3月26日,突然オーストラリアに出国して同棲を始めた。
そして,原告Aは,被告Bらに対し,オーストラリアに永住するのでもう帰国するつもりはないなどと伝えていたが,平成7年4月29日に被告Cとともに帰国し,被告Bの住所地とそれほど離れていない原告Aの住所地で同居し,同年7月からは被告Bの自宅の1階にある事務所で再び写真店の仕事をするようになった。
したがって,原告A及び被告Cは,不貞行為により被告Bと原告Aの婚姻関係を破綻させたのであるから,本件においては,被告Bに対する不法行為が成立する。
(イ)上記不貞行為により原告Aが被告Bに対して支払うべき慰謝料の額は,1000万円が相当である。
また,上記不貞行為により被告Cが被告Bに対して支払うべき慰謝料の額は,300万円が相当である。
(原告A及び被告Cの主張)
(ア)原告Aは,被告Cと男女関係を持ち,平成6年から平成7年にかけて,同被告とオーストラリアに出国して同棲し,帰国後も同居していることは認める。
しかし,原告Aが昭和52年ころ被告Cと深い仲となったのは,被告Bが原告Aとの性的関係を拒否したからである。
また,原告Aは,昭和58年ころから被告Cと関係を復活させたが,当時,すでに原告Aと被告Bとの間に性交渉は全くなく,被告Bが原告Aに対して自己の要求やわがままを押し通すなど,両者の間の婚姻関係は完全に破綻していた。
したがって,原告Aと被告Cが男女関係を持ち,同居するようになったとしても,その原因はもっぱら被告Bにあるから,原告Aと被告Cの関係は不法行為を構成しない。
(イ)相当慰謝料額については争う。
ウ争点ウ(原告Aと被告Cの原告Dに対する不法行為の成否及び損害)について
(原告Dの主張)
(ア)原告Aは,被告Cと不貞行為に及び,長女である原告Dを捨てて,被告Cとともに外国へ失踪したのであるから,原告A及び被告Cの行為は,原告Dに対する不法行為を構成する。
(イ)原告Aが原告Dに対して支払うべき慰謝料の額は,500万円が相当である。
また,被告Cが原告Dに対して支払うべき慰謝料の額は,200万円が相当である。
(原告A及び被告Cの主張)
(ア)本件は,原告Aと被告Bの夫婦間の問題であり,原告Aと被告Cの不貞行為が原告Dに対する不法行為を構成することはあり得ない。
(イ)相当慰謝料額については争う。
(3)第3事件
ア争点ア(職分管轄の有無)について
(被告Bの主張)
被告Bの第3事件における訴えは,夫婦間の合意に基づく婚姻費用の履行請求に係る訴えであるから,東京地方裁判所が管轄を有する。
(原告Aの主張)
第3事件における被告Bの訴えは,婚姻費用分担金の支払を求めるものであるところ,婚姻費用の分担に関する紛争は,家事審判法9条1項乙類3号により,家庭裁判所の審判事項であるから,東京地方裁判所に管轄はない。
よって,前記訴えは不適法であり,却下されるべきである。
イ争点イ(婚姻費用分担額)について
(被告Bの主張)
原告Aと被告Bの約定に基づき月額24万円とするのが相当である。
(原告Aの主張)
被告Bの主張は争う。
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第3争点に対する判断
1第1事件(1)争点アについて
ア認定事実
前記争いのない事実等及び証拠(甲11,乙34,原告A本人,被告B本人)によれば,次の事実が認められる。
(ア)原告A及び被告Bは,昭和44年10月ころから,原告Aの父が所有していた本件建物において,Jを開業するとともに,本件建物で生活を始め,原告Aが経営する同写真店から得られる収入を生活費として暮らすようになった。
なお,Jは,平成3年7月17日に有限会社組織となっている。
(イ)原告Aの父Gは,東京都江東区a町b丁目c番d号所在の土地(本件土地)に対する借地権及び同土地上の本件建物を有していたが,昭和49年8月に死亡し,原告Aが,同借地権及び本件建物を相続した。
この相続に伴い,原告Aは,約2300万円の相続税債務を負い,これを10年の年賦払いとすることにした。
(ウ)原告Aは,昭和56年6月,第一勧業銀行から5000万円を借り入れて,前記建物を改築して残地に本件駐車場の施設を建築するとともに,相続税を完納した。
本件駐車場から得られた賃料収入は,本件口座に入金されるようになった。
(エ)原告A名義の預金口座は,三和銀行,第一勧業銀行及び東京相和銀行にそれぞれ開設され,また,J名義で第一勧業銀行に預金口座が開設されており,これらの預金通帳は,届出印とともに,2階和室北側のライトテーブルの中に保管され,原告Aと被告Bが共同で管理していた。
これに対し,本件口座の預金通帳だけは,本件建物の2階和室南側のサイドボードの引き出し内に保管され,本件口座の入出金事務の管理は被告Bが行っていた。
イ判断
以上の事実によれば,原告Aは,被告Bに対し,昭和56年ころ,本件口座の通帳の管理を委ね,以後被告Bが本件駐車場を賃貸することによって得られる収入の管理及び借入金返済事務を行ったことが認められるから,原告Aは,昭和56年ころ,被告Bに本件駐車場からの収入管理及び借入金返済事務の一切を黙示に委任したと認めるのが相当である。
これに対し,被告Bは,本件口座の通帳と印鑑は原告Aの書斎の机の引き出しの中に保管され,原告Aが口座の動きを常にチェックしており,被告Bが本件口座から出金するときは原告Aの指示や承諾が必ずあった旨主張し,証拠(乙41)中にはこれに沿う被告Bの供述記載部分も存在する。
しかし,証拠(原告A本人,被告B本人)によれば,本件口座の通帳は2階和室南側のサイドボードの中に保管されており,この通帳だけは他の通帳と別個に取り扱われ,主に被告Bが入出金事務を行っていたこと,したがって,本件口座の入出金事務については,原告Aは直接にはほとんど携わっていないことが推認されることからすれば,被告Bの前記主張は採用できない。
よって,この点に関する原告Aの主張は理由がある。
(2)争点イについて
ア認定事実
前記争いのない事実等及び証拠(甲1の1・2)によれば,被告Bは,昭和56年から平成7年にかけて,本件口座から,別紙の年月日欄記載の各年月日に,送金額及び金額欄記載のとおりの金額を出金し,現金を引き出したり,他の口座に自動送金していたことが認められる。
しかしながら,証拠(甲11,乙6,41,原告A本人,被告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,1原告Aは,平成6年3月26日,被告Bに全く予告なしに,突然交際相手である被告Cとともにオーストラリアに出国し,失踪したものであること,2その当時,原告Aは,被告Cとともにオーストラリアに永住するつもりであり,日本に帰国するつもりは全くなかったこと,3原告Aは,実印,通帳及び不動産の登記済権利証等をすべて本件建物内に置いたまま失踪したものであること,4同年5月1日,知人のHを通じて,被告Bに対して,現在,永住権を取得する準備をしており,二度と日本に帰らないから,すべてを被告Bに譲るつもりであって,そのために実印も権利書も本件建物内に置いてきた旨伝えたこと,5原告Aは,同年6月7日
,被告Bに対して国際電話をかけて,「何もかも売りなさい,すべて売りなさい。」と述べた事実があること,6原告Aは,同日ころ,オーストラリアの原告Aのもとを訪れた原告Dに対し,「売れる物は何でも売りなさい。
ママが生活できないのなら,家を売れば食べていけるから。
パパはもう何もいらない。」と述べた経緯があること,以上の各事実が認められる。
これに対し,原告Aは,被告Bや原告Dに対し,財産を売ってもよいなどと述べたことはない旨主張し,証拠(原告A本人)中には,これに沿う原告Aの供述も存在する。
しかし,被告B本人の供述によれば,被告Bの日記(乙6)は,原告Aが失踪した後,自己の精神の安定のために毎日書いていたものであり,その記載の信用性は極めて高いと認められるところ,上記2456の各事実はすべて同日記中に記載があるものであるから,これに反する原告Aの前記供述部分は信用できない。
イ判断
してみると,仮に,被告Bが本件口座から出金した金員を自己のために費消した事実があったとしても,原告Aは,オーストラリアに出国した時点で,原告Aが有するすべての資産を被告Bに贈与する意思と,被告Bが原告Aに対して負担するあらゆる債務を免除する意思を有していたものであり,その後,電話で直接,又は知人のHないし原告Dを介して被告Bに対し贈与及び免除の意思を伝達し,被告Bは贈与の申込みを承諾して本件口座から金銭を引き出したものと認められる。
そうとすれば,原告Aは,被告Bに対し,本件口座からの費消金の返還義務を含む全債務を免除し,また,本件口座に係る預金債権を含む全資産を被告Bに贈与したものと認めるのが相当である。
したがって,被告Bは,原告Aに対して,委任契約に基づく受取物を返還する義務を負わないから,争点イに関する被告Bの主張は理由がある。
(3)争点ウについて
前記(2)のとおり,原告Aは,被告Bに対して,被告Bが負担していた債務をすべて免除し,原告Aの所有する全財産を贈与する旨の意思表示をしたものと認められる。
したがって,仮に,被告Bが,前記意思表示の前後にわたり本件口座から金銭を引き出してこれを私消していたとしても,前記意思表示前に発生していた被告Bの損害賠償債務は,前記意思表示によって免除されたものと認められるし,他方,前記意思表示後は,本件口座に係る預金債権は被告Bに贈与されたものと認められるから,被告Bがこれを費消しても,そもそも原告Aに対する不法行為が成立せず,結局,被告Bは原告Aに対して損害を賠償する責任を負わない。
したがって,争点ウに関する原告Aの主張は理由がない。
(4)争点エについて
前記争いのない事実等によれば,被告Bは,平成6年3月から平成7年4月までの間に,原告A所有の自動車2台,ヨット及び撮影機器類を第三者に売却した事実が認められる。
しかしながら,前記(2)及び(3)のとおり,原告Aは被告Bに対して全財産を贈与したものと認められ,上記動産類も被告Bに贈与されたものと認められるから,被告Bがその所有に係る自動車等を売却しても,原告Aに対する不法行為は成立しない。
よって,争点エに関する原告Aの主張は理由がない。
(5)争点オについて
前記(2)ないし(4)のとおり,原告Aは,被告Bに対し,自動車等を含めて全財産を贈与したのであるから,被告Bが自己の所有物である自動車等を売却しても,原告Aには損失が生じないことになる。
したがって,争点オに関する原告Aの主張も理由がない。
(6)結論
以上によれば,第1事件における原告Aの請求は理由がないから,これを棄却すべきである。
2第2事件
(1)争点アについて
ア認定事実
前記争いのない事実等及び証拠(乙10ないし16〔枝番を含む〕,19ないし21,37ないし39,41,被告B本人,弁論の全趣旨)によれば,次の事実が認められる。
(ア)原告Aは,昭和56年6月,第一勧業銀行から5000万円を借り入れたが,その後,これを東京相和銀行から借り換えたほか,東京相和銀行からは,平成元年6月22日に250万円を,平成2年4月24日に200万円を,同年12月25日に200万円を,それぞれ借り入れた。
平成6年4月当時,原告Aが東京相和銀行に対して負担していた残債務の合計額は,2727万1202円であった。
また,原告Aは,国民金融公庫からも借入れをしており,平成6年4月当時,81万1686円の残債務を負担していた。
(イ)被告Bは,原告Aが被告Cとともにオーストラリアに出国した後,原告Aの写真業による収入が途絶えたため,原告Aが残した東京相和銀行及び国民金融公庫に対する上記債務の返済に苦慮するようになった。
そこで,被告Bは,実姉Eから平成6年4月17日に1400万円を借り,また,実兄Fから同月18日に600万円を借りて,被告Bが山一証券で運用していた金員のうち800万円余りを加えて,弁済の原資を用意した。
被告Bは,東京相和銀行に対しては,同月18日に53万8000円を,同月19日に2673万3202円をそれぞれ支払い,国民金融公庫に対しては,同年6月30日に81万1686円を支払って,原告Aの債務を全部代位弁済した。
イ判断
以上の事実によれば,被告Bは,原告Aの債務を,原告Aのために,自己の出捐した金銭で(山一証券で運用して取得した800万円の原資は被告Bの給与であり,仮にそうでないとしても原告Aは,全部の財産を被告Bに贈与し,被告Bの債務をすべて免除していると認められることは,前記のとおりである。)代位弁済したものというべきであるから,被告Bは,原告Aに対し,事務管理に基づいて,立替払いした合計2808万2888円を請求することができる。
なお,原告Aは,被告Bに対し,相殺の意思表示をしているが,前記1の(1)ないし(6)で判断したとおり,原告Aの被告Bに対する自働債権の存在は認められないから,相殺の効力は生じないものというべきである。
よって,被告Bは,原告Aに対し,2808万2888円の内金2800万円及びこれに対する催告後である平成10年4月19日からの遅延損害金を請求することができるから,争点アに関する被告Bの主張は一部理由がある。
(2)争点イについて
ア認定事実
前記争いのない事実等及び後掲証拠によれば,次の各事実が認められる。
(ア)被告Bは,昭和45年に原告Dを産んだ後,原告Aとの性交渉を持つことを嫌がるようになった。
原告Aは,昭和52年夏ころ,当時,写真店で助手として勤務していた被告Cと交際を始め,ほどなく肉体関係を持つようになったが,被告Bは,昭和55年ころ,原告Aと被告Cとの関係を知り,原告Aを非難した。
そのため,原告Aは,被告Cを解雇し,いったん同被告との関係を解消した。
その際,被告Bは,被告Cから,慰謝料として100万円を受領した(甲11,乙2ないし4,41)。
(イ)しかし,原告Aは,昭和60年ころ,被告Cとの交際を再開し,同被告と肉体関係を持つようになった。
被告Bは,これに気づかず,本件建物において原告Aとの生活を継続し,平成元年10月ころ,原告A及び原告Dとともに家族でアメリカに観光旅行に行き,また,被告Bが,原告Aから毎月の生活費を受け取って,家族全員の生活にかかわる家計の管理を担当するなどして,生活していた。
なお,原告Aは,被告Bに対し,平成6年に至るまで,離婚の申し入れ等をしたこともなかった(甲11,乙41,被告B本人,弁論の全趣旨)。
(ウ)ところが,原告Aは,平成6年3月26日,被告Bに何も告げず,突然,被告Cとともにオーストラリアに出国して姿を消した。
被告Bは,当初原告Aが行方不明になったものと考え,原告Aの安否を気遣って,警察に捜索願を出すなどしていたが,同年4月6日,原告Aが被告Cとともにオーストラリアに駆け落ちしたことを知った。
被告Bは,原告Aに対し,国際電話で帰ってくるよう頼んだり,原告Dをオーストラリアの原告Aのもとに行かせて,原告Aに帰宅するよう説得させたりしたが,原告Aは帰るつもりはない旨答えるのみであった。
また,被告Bは,原告Aの写真業による収入が途絶えたため,東京相和銀行及び国民金融公庫に対する原告Aの債務や税金の支払に苦慮し,親族から借金するなどして,その資金を工面した(乙6,41,被告B本人)。
(エ)しかし,その後,原告Aは,オーストラリアでの生活がままならず,仕事もなかったため,日本に帰ることとし,平成7年4月29日,被告Cとともに帰国した。
原告Aと被告Cは,本件建物から遠くない肩書住所地にアパートを借り,現在まで同居を続けている。
また,原告Aは,本件建物の1階にあるJの事務所を使用して,「K」の商号で写真業を再開し,ほぼ毎日,本件建物に通っている(甲11,19,乙19,41,原告A本人,弁論の全趣旨)。
イ判断
(ア)不法行為の成否
前記認定事実によれば,原告A及び被告Bは,婚姻後平成6年に至るまで,性交渉をそれほど持たないという点以外には特に問題のない夫婦生活を営んでいたが,被告Cは,原告Aと被告Bの婚姻関係を知りながら,昭和52年ころから原告Aと愛人関係になり,その後昭和55年に被告Bに露見し,被告Bの強い要請によっていったんは原告Aとの愛人関係を解消したにもかかわらず,原告Aと被告Cは,昭和60年ころから再び愛人関係を再開し,平成6年3月26日には,被告Bを置いて二人で突然国外に脱出し,以後現在に至るまで同棲を続けているという事実が認められる。
そうであるとすれば,原告A及び被告Cの昭和60年以降の一連の行為は,被告Bに対する不貞行為であり,不法行為を構成すると認めるのが相当である。
これに対し,原告A及び被告Cは,1婚姻は男女の性的結合であり,夫婦間の性交渉の存在は婚姻継続に不可欠なものであるところ,被告Bは昭和45年ころから原告Aとの性交渉を拒むようになり,原告Aと被告Cとの関係が明るみに出た昭和55年以降は一切性交渉を持とうとしなかったこと,2昭和59年ころ,Jの仕事が激減し,原告Aが懊悩しているときでさえ,被告Bは「どうするの,お金が必要よ。」といって原告Aを責め立てるばかりで,何ら協力の姿勢を見せなかったこととなどの諸事実からすれば,昭和60年ころには原告Aと被告Bの婚姻関係はすでに破綻していた旨主張する。
しかし,1については,一方では原告Aは,昭和61年には被告Bとの間で性交渉を持ったことがあると自認するなど,原告A自身の主張のうちにも動揺が見られ,一貫性がないことから,原告Aの主張自体の信用性に疑義があるが,その点を措くとしても,そもそも,婚姻は,男女の性的結合を含む全人格的な人間としての結合関係であり,その結合の内容,態様は多種多様にわたるものであって,性交渉の不存在の事実のみで当然に婚姻関係が破綻するというものではなく,破綻の有無を認定するにあたっては,夫婦間の関係を全体として客観的に評価する必要がある。
そして,前記認定事実のとおり,原告A及び被告Bは,昭和55年以降も,同居生活を続けつつ,原告Aが写真業及び駐車場賃貸業で収入を得て,被告Bに一定の金銭管理を
委ね,被告Bが家計の管理を行い,時にはともに海外旅行に行くなど,原告Aが被告Cとともにオーストラリアに出国するまでは,破綻どころか,むしろ円満ともいえる通常の婚姻生活を営んでいたことが認められるのである。
2については,当該事実があったからといって,当然に原告Aと被告B間の婚姻関係を破綻させるものではないから,原告Aらの主張はそれ自体失当である。
以上によれば,原告Aと被告Bとの間の婚姻関係が破綻していたとの原告Aらの主張は,到底認めることができず,原告Aと被告Cは,各自,被告Bに対し,不法行為の責任を負うというべきである。
(イ)損害
前記争いのない事実及び認定事実のとおり,原告A及び被告Bは,昭和43年11月25日に婚姻し,その後同居生活を続けていたものであるところ,原告A及び被告Cは,昭和60年ころから,被告Bに隠れて愛人関係を継続し,平成6年,突如として二人で国外に脱出して,被告Bに資金繰りなどについて多大な負担をかけ,また,原告Aは,被告Bに対して二度と帰らない旨述べていたにもかかわらず,その後,平成7年には帰国して,被告Bの住所地の近くで同棲生活を継続したまま,被告Bの住所地にある事務所で写真業を再開して,同所に通っていることが認められる。
そうとすれば,原告A及び被告Cは,二人連れ立った国外脱出によ
り,被告Bの家庭生活の平穏を突然破壊し,被告Bがそれまで25年以上にわたって築き上げてきた原告Aとの婚姻関係を根底から覆してこれを修復し難いものとし,被告Bをして経済的にも苦境に立たせただけでなく,被告Bがもはや原告Aが帰ってくることはないものとあきらめ始めたころに,突如として帰国し,被告Bの生活圏内で同棲を始め,しかも,原告Aが,被告Cとの同棲場所から,ほぼ毎日のように被告Bの住所地に通うことを耐えるよう強いているのであって,被告Bが平成6年から現在までに原告Aと被告Cの行為から受けた衝撃,驚愕,心痛及び屈辱の念などは察するに余りがある。
そして,本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,原告Aが被告Bに支払うべき慰謝料額は1000万円,被告Cが被告Bに支払うべき慰謝料額は300万円とするのが相当である。
(ウ)結論
以上によれば,被告Bは,原告Aに対して,1000万円の,被告Cに対し,300万円の損害賠償を請求することができる。
したがって,争点イに関する被告Bの主張は,いずれも理由がある。
(3)争点ウについて
ア認定事実
前記争いのない事実等,上記(2)アの認定事実,証拠(乙17)及び弁論の全趣旨によれば,1原告Dは,昭和45年5月7日に原告Aと被告Bとの間の長女として出生した後,平成6年に至るまで,原告A及び被告Bと同居していたこと,2原告Aが被告Cとともにオーストラリアに出国すると,原告D自らオーストラリアに出向いて原告Aに被告Bのもとに戻るよう懇願したが,原告Aはこれを拒んだこと,3それにもかかわらず,原告Aは,結局帰国して,被告Cとの同棲を続けていること,4他方,原告Dは,平成2年5月には成年に達し,平成10年以降には婚姻して本件建物から新居に移ったこと,以上の各事実が認められる。
イ判断
上記認定事実からすれば,原告Dは,原告Aと被告Cの出国及びその後の同棲により,大きな心理的衝撃を受け,残された被告Bを支援すべく物心両面における負担を課せられたことは,十分理解し得るところではある。
しかしながら,原告Dは,平成6年当時,すでに成人に達しており,原告Aの監護,教育が不可欠な状態を脱していたのであって,原告Aと被告Cの失踪及びその後の不貞行為は,被告Bとの関係で不法行為となるとしても,原告Dに対する関係では,不法行為を構成しないといわざるを得ない。
また,原告Dに,平成6年当時,原告Aとの間で平穏な同居生活を続け,父娘の良好な関係を保つことについての事実上の利益があったとしても,これが法律上も保護されるべき利益であるとまではいえない。
したがって,争点ウに関する原告Dの主張は,その余の点を判断するまでもなく,いずれも理由がない。
(4)結論
以上によれば,被告Bの原告A及び被告Cに対する各請求は,いずれも理由があるからこれを認容すべきであり(立替金請求に係る損害金請求については,一部理由がない。),原告Dの同請求は,いずれも理由がないからこれを棄却すべきである。
3第3事件
(1)争点ア(職分管轄の有無)について
ア原告Aは,被告Bに対し,婚姻費用として月額24万円を支払う旨書面で約しているが,被告Bが原告Aに対して約定の金員の支払を求めるにあたっては,もっぱら家庭裁判所の審判によるべきか,それとも民事訴訟によることも許されるかがまず問題となる。
イこの点,上記約定が婚姻費用の分担を目的とするものであることからすれば,民法760条,家事審判法9条1項乙類3号により,家庭裁判所の審判によらなければならないようにも考えられる。
しかし,本件においては,原告Aと被告Bは,当事者間に存した婚姻費用の分担についての紛争を解決するために,双方が互譲した結果,前記約定によって金銭の交付の合意をしたものと解されるから,前記約定は,民法上,書面による贈与契約又は少なくとも和解契約の性質を有するというべきである。
また,婚姻費用の分担に関する処分が家庭裁判所の審判によるものとされている趣旨は,夫婦間で具体的な分担金額を決定するにあたっては,一律明瞭な基準があるわけではなく,夫婦双方の資産,収入,社会的地位等の一切の事情を考慮する必要があるためであると解されるところ,本件においては,原告A,被告B間の協議によって,すでに明瞭に分担金額が決定されているのであるから,家庭裁判所の審判によると解すべき必要性は乏しい
ウしたがって,被告Bが原告Aに対して,前記約定の履行を請求するについては,民事訴訟によることも許されると解するのが相当であり,争点アに関する被告Bの主張は理由がある。
(2)争点イ(婚姻費用分担額)について
前記のとおり,原告Aが,被告Bに対し,平成7年9月12日,婚姻費用として,月額24万円を毎月末日限り支払う旨約したこと,原告Aはその後一部について支払義務を怠るようになり,平成14年1月末日現在での原告Aの未払金額は,合計390万円となっていることについては,当事者間に争いがない。
よって,争点イに関する被告Bの主張は理由がある。
(3)結論
以上によれば,第3事件における被告Bの原告Aに対する請求は理由があるから,これを認容すべきである。
第4結論
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